海難防止情報
はじめに
次の「7つの安全運航の基本」を守って海上での楽しい1日を過ごされることを祈っております。
1 出航前に天気予報を確認し、航海中も常に気象、海象の変化に注意する。
2 出港前には、船体・機関を点検する。
3 定員オーバーをしない。
4 海上交通ルールとマナーを守る。
5 見張りを励行し、船位を確認する。
6 乗船者全員が、常に救命胴衣を着装する。
7 万一に備え、連絡絡体制を確保する。(国際VHF、防水の携帯電話)。
○ 発航前検査 (東京海上保安部作成 PDF:1ページ)
令和5年度 春の事故ゼロキャンペーン(R5.4.15~5.7)
〇 船舶事故・人身事故発生状況(速報値)(第三管区海上保安本部作成 PDF:6 ページ)
令和4年 海難発生状況
令和5年1月
第三管区海上保安本部の発表によれば、令和4年に茨城県から静岡県にかけての海域で発生した事故は、船舶事故246隻、人身事故444人でした。
○ 船舶事故(アクシデント)の特徴
用途別の船舶事故発生数では、プレジャーボートによる事故が140隻(約57%)ともっとも多く発生し、海難種類としては、機関故障、推進器障害、燃料欠乏、バッテリー過放電といった運航不能がもっとも多く、次いで衝突・乗揚げとなっています。
プレジャーボートの事故事例
プレャーボートは、遊漁目的で漁場を速力8ノットで移動中に、一旦は、錨泊中のケミカルタンカーを確認していたが、タンカーの船首を交わせるものと思い継続監視を怠り、魚探に注視していた結果、プレジャーボートは、ケミカルタンカーの左舷中央部に衝突。レジャーボート乗員4名が重症。
水上オートバイの事故事例
事故者は、神栖市日川浜から水上オートバイを発進させ航走していたところ、エンジンを吹かしても速力が 上がらない状況になり、その後、エンジンが停止し漂流、118番通報したもの。
その後、水上オートバイは、 付近の消波ブロックに流され、事故者は自力で消波ブロックに上陸し、水上オー トバイは消波ブロックに乗り上げた。 命に別状なし。
● 人身事故の特徴
マリンレジャーに伴う海浜事故が220人(約50%)ともっとも多く、そのうち遊泳中の事故が54人(約24%)で、33名が死亡事故となっています。
また、スワン型浮輪などで遊んでいたが、沖合に流されたため、自力で戻れずに帰還不能となった事故、遊泳中に離岸流により沖合に流され、漂流した事故が発生しています。
浮具による事故事例
事故者2名は、家族とともに開設前の波左間海水浴場を訪れ、スワン型の浮遊具に乗り遊んでいたところ、風を受け沖に流されたもの。大声で救助を求めていたところ、海の家の設営準備に当たっていた作業員が気付き、水上オートバイにより無事救助されました。
離岸流の事故事例
事故者は、友人4人とともに河口付近で遊泳していたところ、事故者含め3人が離岸流により沖合に流され漂流した。その後通行人が119番通報。救助機関により捜索を開始。1名は自力で上陸、もう1名は通報者により救助され命に別状なし。残りの1名(事故者)は、県警ヘリにより発見救助され、搬送先の病院で死亡が確認された。
「出航時点検・整備・記録」及び「乗船簿」
近年、機関の信頼性が増し、機関故障は少なくなってもよいはずですが、相変わらず機関故障事故が多く発生しています。
プレジャーボートの機関故障事故はマリーナの救助や僚船の支援を受けるなどによって、事故の数として表れていないもの多くあると推察されます。
プレジャーボートの中には、自動車と同じような感覚で、船に到着後、荷物を積み込み、すぐに出航される方も見受けられます。 そのため、バッテリーあがり、電極の接触不良やガス欠(燃料不足)、潤滑油不足など初歩的な点検ミスによって、航行できなくなってしまう事故も多く発生しています。
機関故障事故の事例(1)
釣り後、エンジンの再起動を試みるも起動せず、118番救助要請。
巡視艇により曳航救助、乗員にけが等なし故障原因は、充電不足によるバッテリーの過放電。該船は、出港前点検としてエンジンを試験起動できたことから、バッテリー残量の確認を怠っていた。
機関故障事故の事例(2)
マリーナを出港、遊走中にエンジンオイル量不足の警報が点灯したため、エンジンを停止してオイルを補給し、その後、再度エンジン起動を試みたものの起動せず、航行不能となり、付近の浅瀬に乗揚げた。
付近をパトロール中の海上保安庁巡視艇が発見し救助された。(海上保安官が、船外機エンジンに燃料手動ポンプで燃料を送油したところエンジンが起動し、自力航行可能となった。)
ひとたび機関故障事故が発生すると、天候の急変や風潮流の影響によって、転覆や陸岸への座礁といった危険性が増大するなど、人命の危機が懸念されるといった重大な事故に発展するおそれがあります。
一方、これら機関故障事故は、日頃の整備に加え「出航前の点検・整備」を実施することで防止できたと思われるものも少なくありません。
今般、当協会理事であり海上安全指導員として活動している「樋口 誠六」指導員から、「出航時点検・整備・記録」(PDF)の提供がありました。
樋口氏ご自身がセーリング・クルージングの前に必ず実施するチェックシートです。
皆様もぜひご活用いただき、安全で楽しいマリンライフの実現なさって下さい。
■ 「出航時点検・整備・記録」 (PDF 102KB)
機関故障と言うと、軽く考える方がいますが、救助が遅れると大事に至るケースもあります。「118」(海上保安庁)、マリーナ、自宅などの緊急連絡先を記録しておき、躊躇することなく、早めに連絡しましょう。
もちろん携帯電話は防水パックに入れて持ち歩きましょう!(予備バッテリーも忘れずに!)国際VHFを使用すれば、周囲の船舶に直ちに連絡することができます。
また、「樋口 誠六」海上安全指導員 からは、「乗船簿」 (PDF) についても提供がありました。
樋口氏ご自身がセーリング・クルージングの前に家族やマリーナに提出している「クルージング計画」と「乗船簿」です。
この乗船簿を記入することで、クルージングに出航する前に、乗船者の人命を預かる船長としての自覚を強く持つことができます。
事故防止・安全運航に心がけ、笑顔で帰港できるよう活用して下さい。
■ 乗 船 簿 (PDF 70KB)
小型プレジャーボート等小型船の横浜港における事故防止の呼び掛け
ボートオーナー、遊漁船業者、レンタル業者の方へ
横浜港内で見張り不十分を原因とするプレジャーボートの衝突による死亡事故が数件発生し、尊い命が失われています。これ以上、不幸な事故を起こさないよう以下のマナーを守って海のレジャーを楽しみましょう。
1.気象の変化に注意しましょう。
慣れた船でも風や雨、濃霧など天候、海況の変化により普段と全く変わったものになります。最新の気象情報を常に入手し、荒天が予想される場合、出港を見合わせたり、帰港することも命を守るために大切です。
2.常に見張りを徹底しましょう。
海の上では絶えず周囲の状況が変化しています。航行中は他の船の動きや障害物の有無など常に見張りを励行しましょう。また、船長は釣りに夢中にならず絶えず回りの状況を確認しましょう。
3.スピードの出し過ぎに注意しましょう。
港内などの船舶通行の多い場所では、スピードの出し過ぎに注意しましょう。船の引き波によって付近に停泊中の船が大きく揺れるなどとても危険です。また、港内では大型船の進路を妨害しないよう早めに避航しましょう。
4.夜間の航行に注意しましょう。
夜間は船舶だけでなく、灯標や防波堤なども見えにくくなります。
自船も相手から見えやすいように法令で定められた灯火を掲げましょう。
5.立入が禁止された施設への上陸は止めましょう。
防波堤など管理者によって立入が禁止された施設への上陸、渡船は危険ですのでやめましょう。